東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
従業員を雇用していると忘れてはいけないのが有給休暇の付与についてです。取得のさせ方や、日数、支払う賃金まで様々な点が法律で定められていますので注意しておかなければなりません。
さて、今回は年次有給休暇を使ったときに支払う賃金について以下の3点にまとめました。
- 賃金計算方法は3種類
- 通常の賃金
- 平均賃金と標準報酬月額を使う
賃金計算方法は3種類
従業員が有給休暇を取得したときの賃金の計算方法は、労働基準法では以下のように決められています。
計算方法は人によって変えることができないため、すべての従業員で同じにしておく必要があります。
⑨ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法(大正十一年法律第七十号)第四十条第一項に規定する標準報酬月額の三十分の一に相当する金額(その金額に、五円未満の端数があるときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数があるときは、これを十円に切り上げるものとする。)又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
e-GOV法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049#Mp-Ch_4
労働基準法によると、計算方法は以下の3つに分けられます。
・通常通り出勤したものとみなして支払う
・平均賃金を求めて支払う
・標準報酬月額から計算して支払う
通常の賃金
通常通り出勤したものとみなす方法が一番一般的な方法です。
月給制の従業員であれば、有給休暇を取得しても欠勤控除などはされずに給与を受けとれます。給与計算をする事務作業も簡単になります。
日給制や時給制の従業員であれば、通常の勤務をしたときと同じように時給×所定労働時間数で計算した額を支払うこととなります。
ここの通常の賃金に含まれるものは、割増賃金の計算の基礎となる手当までを含むとされています。
家族手当、通勤手当、住宅手当などは含まなくてもよいということになります。
しかし、通勤手当を定期券の金額で支払っている場合は、有給休暇を取得したからと言って金額が変わるわけではありませんので、控除せずに支払う方がよいでしょう。
平均賃金と標準報酬月額を使う
平均賃金
平均賃金については以下のように決められています。
第十二条 この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
e-GOV法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049#Mp-Ch_1-At_12
一 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の六十
平均賃金の計算方法は以下の2つありますが、大きい方を選ぶこととなります。
・直近3か月間の賃金の総額÷その期間の総日数
・直近3か月間の賃金の総額÷労働した日数×0.6
例)2024年7月~9月までの賃金総額が90万円、歴日数92日、労働日数63日の場合
90万円÷92日=9782.6円
90万円÷63日×0.6=8571.4円
この場合、上の方法で計算したときの結果が大きくなりますので、9782円を1回の有給休暇分として支払います。
支払う側としては、通常の賃金より額を抑えることができるというメリットがあります。
一方で、有給休暇を使用するごとに計算する手間がかかることや、支払われる有給休暇の金額が少なくなることでモチベーションの低下を引き起こしてしまう可能性があるというデメリットもあります。
標準報酬月額
標準報酬月額とは、健康保険料の算定に使うものです。こちらを使用して有給休暇の計算をすることもできます。
計算式は以下のようになっています。
・標準報酬月額÷30
標準報酬月額は社会保険に加入していれば情報がありますので、計算は簡単になります。
ただし、社会保険に加入していない従業員が有給休暇を使用する場合は、標準報酬月額に相当する額を出して計算しなければならなくなり、計算が難しくなる可能性もあります。
標準報酬月額を計算方法とする場合には、最初の引用にもありましたが、労使協定を締結する必要がありますので注意が必要です。
終わりに一言
給与計算は時間が限られている中で、正確性が求められる業務です。その中で有給休暇の取得の計算が煩雑になっていると計算ミスや支給漏れが起こるリスクもあります。
給与計算は専用のソフトを活用する、専門家である社労士に依頼するという方法で、社内業務のスリム化や正確性を担保できるとよいと感じます。
給与計算でのお困りごとのサポートも行っておりますし、給与計算までをパッケージ化した社外の労務部としての業務も請け負っています。お見積りなど気になりましたら、お気軽にお問い合わせください。