東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
令和5年8月31日に賃上げの際に影響してくる、業務改善助成金の対象が広がりました。
さて、今回は業務改善助成金について以下の3点にまとめました。間違いがないよう、厚生労働省のページを参照しましたが、なるべく読みやすくなるよう言い換えたり簡略化して記載しています。
- 業務改善助成金とは
- 変更前との違いは
- 対象となるの事業や経費は
業務改善助成金とは
制度について
業務改善助成金を簡単に説明すると、生産性向上のための設備投資等と一緒に賃金を引き上げた時に、設備投資の費用の一部を助成してもらうことができる制度です。
助成率は最大9/10まで、助成額は最大600万円となっています。
製造業の例(生産器具)
製品の出来具合にばらつきがあり、人員を多く割いていたことで作業効率が悪かった
↓
出来具合のばらつきがなくなり、人員を他の作業に回すことで作業効率が向上した
卸売業の例(レジシステム)
入金・売上の集計、レジ業務により作業時間が長くなっていた
↓
生産業務が効率化し接客時間が短縮、顧客の回転率も向上した
飲食業の例(調理器具)
仕込みや調理作業の時間がかかり、製造できる量に限りがあった
↓
仕込みや調理時間が短縮され、製造できる量が増えて効率が向上した
食品を扱う業種の例(冷蔵・冷凍庫)
十分な冷凍が行えず、食材や製品の状態により処理作業が異なっていた
↓
十分な冷凍が行えるようになり、保存中の品質が改善、処理作業の効率も向上した
ここで言う設備投資等は多くの内容が含まれています。
実際に設備を導入することはもちろんのこと、我々社労士によるコンサルティングや、スキルアップのための人材研修も含まれています。
変更前との違いは
令和5年8月31日から
以下の3点が拡充されたポイントになります。
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内の事業場が対象に(以前は30円以内)
今までは地域内最低賃金が910円の地域では、事業場内の最低賃金が945円(差額35円)だとこの助成金の対象外でした。
それが今回の拡充で対象内となり、助成金を受けることができるようになります。
- 事業場規模が50人未満であれば賃金引上げ後の申請が可能に(以前は事前に賃金引き上げ計画の提出が必要)
必要な手続きに「賃金引き上げ計画」と「事業実施計画」の2つの計画を事前に提出があります。
その計画の提出が、2023年4月1日から12月31日の間に賃金引き上げをしていれば、賃金引き上げ計画の提出は不要となりました。
- 助成率の区分が最低賃金900円未満から対処に(以前は870円未満)
今の事業場内の最低賃金によって助成率が異なりますが、区分が30円上がったことで多くの対象となる企業が増えます。
これに伴い、助成率4/5の範囲も920円未満から950円未満となったことも嬉しいことです。
次の表にもありますが、870円未満が対象となる助成率9/10という県は中部地域にはありませんでした。対象だったのは東北の一部と沖縄県くらいです。
県名 | 最低賃金(令和4年度改正) |
愛知県 | 986円 |
三重県 | 933円 |
岐阜県 | 910円 |
静岡県 | 944円 |
富山県 | 908円 |
石川県 | 891円 |
福井県 | 888円 |
長野県 | 908円 |
10月から地域別最低賃金の引き上げに対応して事業場内最低賃金を引き上げる場合は、発行日の前日までに引き上げる必要があります。
対象となるの事業や経費は
対象となる事業者
- 中小企業、小規模事業者
- 地域別最低賃金と事業場内最低賃金の差額が50円未満
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
なお、中小企業、小規模事業者は次の通りです。
業種 | 資本金等 | 常時使用する従業員 | |
製造業その他 | 製造業、建設業、運輸業など | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 小売店、飲食店 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 宿泊業、複合サービス業など | 5千万円以下 | 100人以下 |
対象となる経費
助成対象となる経費は、「生産性向上・労働能率の増進に資する設備投資」となっています。
一例では次の通りです。
経費区分 | 具体的な内容 |
設備投資 | 機械装置等購 入費、造作費、借損料、改築費など |
経営コンサルティング | 経営コンサルティング経費、謝金、旅費など |
その他 | 会議費、印刷製本費、人材育成・教 育訓練費、委託費、広告宣伝費など |
条件付き | 乗用自動車、貨物自動車、PC・タブレットなど |
条件付きですが、PCなども対象としてもらえることもあります。
助成額と助成率
助成額は、最低賃金額と引き上げる労働者数、今の事業場の規模によって異なります。
30円コース:1人の労働者の賃金を引き上げて、事業規模30人以上の場合は30万円。10人以上の労働者の賃金を引き上げて、事業規模30人未満の場合は130万円となります。
コース区分 | 助成上限額 |
30円コース | 30万円〜130万円 |
45円コース | 45万円〜180万円 |
60円コース | 60万円〜300万円 |
90円コース | 90万円〜600万円 |
そして、助成率は申請を行う事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金により異なります。
引き上げ前が920円であれば助成率4/5となります。
生産性要件が別であり、そちらを満たすと()内の助成率になります。
事業場内最低賃金 | 助成率 |
900円未満 | 9/10 |
900円以上950円未満 | 4/5(9/10) |
950円以上 | 3/4(4/5) |
終わりに一言
変更された記事を見てから急いでまとめてみました。私自身の参考にもなりますし、何より最低賃金で従業員さんを雇っていると10月に一斉に賃上げが発生します。
事前に賃上げしておくことで対象となることもありますので、ぜひご検討ください。