人材不足とキャリアアップ助成金

労働法・労働保険

東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
最近の相談の中でも人手不足に悩まれている経営者様が相変わらず多いなと感じます。

さて、今回は人手不足の解消につながるかもしれないキャリアアップ助成金を以下の3点にまとめました。

  • キャリアアップ助成金の概要
  • 正社員化コース
  • その他のコース

キャリアアップ助成金の概要

非正規雇用労働者の処遇改善のため

キャリアアップ助成金を受給とは、キャリアアップ計画を作成・提出し、その計画に沿って取り組みを実施していくことで受給できる助成金になります。

キャリアアップ助成金で有名なものには正社員化コースがあります。
他にも、4種類のコースがあり、全部で5つのコースが用意されています。

コース名要件※一部抜粋支給額加算額上限
正社員化コース有期雇用労働者を正社員に57万円あり20名/年度
賃金規定等改定コース3%以上5%未満増額5万円あり100名/年度
賃金規定等共通化コース共通の賃金規定を作成60万円なし1回
賞与・退職金制度導入コース賞与と退職金制度を導入56万8000円なし1回
短時間労働者労働時間延長コース短時間労働者を社会保険に加入23万7000円なし45名/年度

事業所の抱える人手不足の課題を解消するためには、正社員で働きたい方の確保はもちろんのこと、短時間でも働ける方の確保も重要となってきます。
子育てが一段落したママさんや、介護などの事情によりでフルタイムで働くことができない方などが働きやすい職場環境の構築が必要となってきます。
加えて、有期雇用により不安定な職業生活を送る方が正社員として、安心して長期間に渡り活躍できるようにしていくことも大事な要素となります。

キャリアアップ助成金は、これらの方が働きやすくなるような職場作りの取り組みをしていく事業所に対して支給されます。
これらの取り組みをしていると、求人票にも記載できますので、求職者の方へのアピールポイントにもなります。

正社員化コース

コースの中身

正社員化コースは、就業規則等に規定した制度に基づいて、有期雇用労働者を正社員化した際に支給されるコースになります。

未経験の人材をチャレンジ採用する時には、最初から正社員でということに懸念を抱いてしまうこともあるかもしれません。
試用期間を経て、契約社員として能力や働きぶりを見つつ、正社員として活躍してもらえるかの評価を行なっていくことも可能になります。

派遣社員からの正社員化や、父子・母子家庭の親の場合には助成額が加算されます。
さらに、人材開発助成金の訓練を修了した後に正社員に転換した場合にも、助成金が加算されます。従業員さんに、訓練により能力を高めてもらい、戦力として受け入れることができます。

事業所にとっては正社員として雇い入れる前にどのような人材かを見極める時間を作ることができ、従業員にとっては訓練の受講で能力開発や正社員となることで安定した職に就くことができるようになります。

2023年11月29日からの変更点

正社員化コースの内容が23年11月に拡充されました。
拡充された点と新設された点があるため、まとめて変更点として記載します。
以下に変更点を一部抜粋してみます。

変更点現行変更後
助成金の見直し57万円80万円
対象者の雇用期間6ヶ月以上3年未満6ヶ月以上
正社員転換制度を新設20万円
多様な正社員制度の加算9.5万円40万円

まだ正社員化の転換を行なっていない場合、これらの取り組みを実施することで最大120万円の助成金を受給することが可能になります。
現行のままでも使いやすい制度ではありましたが、増額されたことでさらに多くの事業所で取り入れてもらいやすい助成金となりました。

その他のコース

賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者の基本給を3%以上増額改定し、その規定を適用させた際に支給されるコースになります。
金額は中小企業で5万円からと他のコースに比べると大きくはありませんが、増額させた賃金を助成してくれるという点においては使い勝手がいいコースといえます。

少し具体的に見てみます。
現在の賃金が1000円の場合、3%以上の増額となると1030円以上とする必要があります。
月に80時間ほど働く労働者の場合、差額は月額2400円、年額28800円となります。
フルタイムの労働者ですと差額の方が大きくなりますが、月130時間くらいまでは助成金の方が多くもらえることになります。
これにより、労働者のモチベーションが向上したり、会社に愛着を持って長く頑張ってくれるようになることも期待できます。

似たような助成金は他にもありますが、キャリアアップ助成金の場合、人件費の増額に対し助成されるものになる点が異なります。

賞与・退職金制度導入コース

正社員化コースは、就業規則等に規定した制度に基づいて、すべての有期雇用労働者に関して賞与・退職金制度を設け、支給や積み立てをした際に支給されるコースになります。

賞与か退職金制度を導入した場合には40万円が、どちらも導入した場合には56.8万円が支給されます。
賞与の最低支給額や退職金制度の最低積立額が決まっていたりするため、すべての事業所で使い勝手の良いコースではないかもしれません。

しかし、有期雇用労働者にも賞与や退職金制度があるということは求人を出す場合に大きなアドバンテージになりますし、従業員のモチベーションにも影響してきます。
目先の利益だけではなく、中長期的な視点での人材計画のために活用することができる事業所は多くあるのではないでしょうか。

ここで挙げた他の二つとは少し毛色が異なりますが、従業員がモチベーション高く働く環境を整備できるという点が、弊事務所の掲げている「ありたい姿」と一致するコースのため取り上げました。

終わりに一言

今回は、従業員が働きやすくなる環境を作るための整備を行った事業者に対して支給される助成金でした。
備品の購入も検討している経営者の方は他の助成金もありますので、お気軽にお問い合わせください。

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