独立開業と法的な課題

開業記録

東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
開業すると、今までは会社として守っていた法的な課題に対しても対処していくことが求められます。

さて、今回は起業から軌道に乗るまでに起こる法的な課題を以下の3点にまとめました。

  • 事業を始める前に
  • 契約を結ぶ前に
  • 人を雇う前に

事業を始める前に

下調べは念入りに行う

事業を始めるためには、多くのことを決めていく必要があります。

  • 屋号
  • 住所
  • 固定電話
  • ホームページ
  • 商品やサービスとその名称
  • 価格
  • 販売方法
  • ターゲット

すべてのことが決まっていないと開業できない訳ではありませんが、誰に対して何をどうやって売っていくのかはある程度明確になっていないとすぐに壁に当たってしまいます。

上記の中で、屋号や住所などは一度決めると変えるのが難しい部分でもありますので、下調べも重要になります。
インターネットを介した通信販売で商品を提供していくのであれば住所(立地)は大きな問題とはなりません。しかし、来店型のビジネスであれば、最寄駅からのアクセスや駐車場の有無など、アクセスも考慮していく必要があります。
そう言った意味では、ターゲットとなる顧客をイメージして、どのように知ってもらうのかまである程度イメージしておく必要があるため、成り行きで決めるよりは計画的に決めていく方が良いでしょう。

また、屋号や商品名を決める際には、商標権等の産業財産権にも注意しましょう。
有名な判例かもしれませんが、「スナックシャネル事件(最高裁H10.9.10)」という事件がありました。
スナックの店舗名をシャネルとした方がいらっしゃいました。高級ブランドのシャネルがスナックを開業するとは考えにくいかもしれません。実際にまったく関係ない方が運営していたお店になります。ただ、これに対して訴えがされ、有名なシャネルのお店であると消費者が誤認する恐れがあるとしたため商標権に違反しているとした判決です。

名前やロゴ等で商標が登録されている場合、類似した名前やロゴも使用することはできません。商標で登録できる範囲は幅広く、音程やキャッチフレーズなども登録ができます。
登録がされていなくても、よく知られている商品名等と誤認されやすい商品名を使用すると不正競争防止法により損害賠償請求や差止請求をされる可能性があります。

訴訟されてしまうと、経営に集中することが難しくなりますし、金銭的な負担が発生してしまうこともあります。
商標の登録の有無や、インターネットでの検索性、類似の商品がすでに販売されていないかを入念に下調べしておきましょう。

契約を結ぶ前に

契約書の内容は精査する

契約書は、当事者間の合意した内容を明確にするために作成する書面になります。
保証契約などの一部の契約以外では、契約書の作成がなくても契約は成立します。
あまり実感はないかもしれませんが、飲食店や宿泊施設に電話で予約をした時や、コンビニで商品をレジに持っていった時に成立しています。
コンビニから勝手に商品を持ち出したりする行為は違法になるのはそのためです。

契約書には、契約の目的や金額だけでなく、納品された品質の保証、解除の条件、違約の時の違約金の有無、秘密保持などたくさんのことが盛り込まれています。
作成した側だけが有利になるような契約書になっていないかは必ず確認しておきましょう。
双方にとってしっかりとした内容であれば、相手が契約を守ってくれない時には契約内容を守るように請求したり、契約を解除して損害賠償や違約金を請求することも可能になります。
逆に、自身が契約の内容を守っていないと、相手から違約金の請求をされることもありますので、契約相手に満足してもらえるサービスを提供できるように心掛けましょう。

自社で使うシステムや商品の一部を外部に発注することがでてくることもあります。
この場合、仕事の完成に対して報酬を支払う請負契約を結ぶことになりますが、仕事の完成がどのような状態なのかもしっかりと擦り合わせておきましょう。
そうしないと、出来上がりが思っていたものと違ったとしても作り直してもらうことができない、ということも起こります。
また、似た契約方法に準委任契約というものもあります。一般的には、「外注」とまとめてしまうことが多い契約形態ではありますが、法律上には明確な区分がありますので注意しておきましょう。

人を雇う前に

雇用、派遣、請負などがある

一言で人を雇うと言っても、契約の種類はたくさんあります。
それぞれで対応している法律が違いますし、注意しておく内容も異なります。

雇用契約を締結するとなったら、労働基準法や労働契約法という法律を守らなければなりません。
雇用契約は、労働者が働くことを約束して、使用者が対価としてお金を支払うことを約束する契約になります。
ここで出てくる労働基準法や労働契約法では、本来対等な労働者と使用者が、上下の関係になることで不当な扱いがされないように決められています。
お金を払うからと言って、どれだけ働かせてもいい訳ではありませんし、安い賃金でも良いというものではないということです。
よく聞くのは、退職後に未払いの残業代を請求されてしまったという事例や、解雇までの経緯が悪くて不当解雇で争われたことで解雇が取り消しになってしまったという事例です。どちらも高額な支払いのリスクがあるため、正しく運用していくことが必要です。

労働者と決める労働条件では、決められた項目を書面で明示しなければならなかいという決まりがあります。
正当な理由がないのに勝手にクビにすることはできませんし、有給休暇は労働者の権利として与えなければなりません。
パートやアルバイトを雇う場合でも、1ヶ月更新を毎月繰り返すような契約は避けなければなりませんし、正社員等と同じく正当な理由なくクビにはできません。

派遣で働く方も多いので、軌道に乗るまでは派遣で労働力を確保しようとする事業所もあります。
実は労働者派遣法では、事前に履歴書をもらったり、面接を行うことは避けるべきとされています。
同じ事業所では3年間という制限もあるため、将来も見据えて採用計画を立てることが必要です。

終わりに一言

最初は何もわからないのが普通です。困った時に頼れる専門家を持つことも必要だと感じました。

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