資格取得と開業のお金の関係

開業記録

東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
私自身は、資格の登録に合わせて開業届を出そうかなと考えていました。なぜなら、この資格で開業をしようと考えていたからです。しかし、周りの経営者に相談してみた結果、そこまで待つ必要はないということが分かりました。

さて、今回は資格を名乗れる時期と開業届を出す時期の関係を以下の3点にまとめました。

  • 開業届を遅らせるメリット
  • 開業届を早めに出すメリット
  • 私がやってよかったこと

開業届を遅らせるメリット

開業費・創業費が使える

今は別の仕事をしていたり、離職した後で開業を控えている方はいつ開業届を出すべきなのかを悩んでいる方も多いと思います。コンサルタント事務所や士業事務所を開業するとなれば、どこからが開業なのかの線引きがあいまいになるので尚更です。
飲食店や美容院などのお店で開業する方はオープン日なのでしょうか。開業届に開業日を記載する欄がありますが、開業届は事業開始から1か月以内に提出しなければならないと決められていることから、記載する日は提出から1か月以内の過去の日付になります。オープン日に行くことは難しそうですし、1カ月間はいろいろ忙しくなると思うので、あらかじめ出しておくことが普通でしょう。借入などの兼ね合いもありますので何か月か前になる気がします。そう言えば、聞いたことがありませんでしたので、今度お会いした経営者に聞いてみたいと思います。

開業届を遅く出していた場合、それまでの準備期間に使った経費は「開業費」として計上することができます。では、開業費とは具体的にどんなものを指すのでしょう。

(1) 繰延資産の範囲
所得税法上、「繰延資産」とは、個人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後
1年以上に及ぶもので次に掲げるもの(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払
費用を除く。)をいいます(所法2①二十、旧所令7①)。
① 開業費……不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開
業準備のために特別に支出する費用をいいます。

主な繰延資産の償却期間は、次のとおりです(所令 137①③、所基通 50-3)。
① 開業費(開業準備のために支出した広告宣伝費、開業までの給料賃金など)……5年

Ⅱ 繰延資産の範囲について※国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070914/pdf/26.pdf

国税庁の説明では上記の通りとなります。
事業所得を得るための事業を開始するまでの準備期間に支払った費用は開業費にできること、その開業費は繰延資産として5年間で経費にすることができる、となっています。

繰延資産(開業費)の償却費の計算については、60か月の均等償却又は任意償却のいずれかの方法によることとされています(所得税法施行令第137条第1項第1号、第3項)。
 任意償却は、繰延資産の額の範囲内の金額を償却費として認めるもので、その下限が設けられていないことから、支出の年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいと解されます。
 また、繰延資産となる費用を支出した後60か月を経過した場合に償却費を必要経費に算入できないとする特段の規定はないことから、繰延資産の未償却残高はいつでも償却費として必要経費に算入することができます。

償却期間経過後における開業費の任意償却※国税庁
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/08.htm

また、質疑応答事例では上記の通り、繰延資産にした開業費は5年を超えても経費にすることができるとあります。

開業日についての条文は見つかりませんでしたが、どうやら個人事業主では開業の日よりも前に使った経費が開業費となるようです。
開業費としては、「広告宣伝費」、「消耗品費」、「市場調査費」、「交際費」など多くの経費が当てはまります。開業した年の収入はどうしても少なくなりがちですので、これらを翌年以降の利益が出たときの経費として使うことができるのはメリットが大きいと言えます。

開業届と同時に青色申告承認申請書を出して、確定申告を青色申告で行えば赤字の繰り越しが3年まで認められています。3年以内に大きく黒字が出るように営業を頑張れば、開業費にこだわる必要は低いかもしれません。

開業届を早めに出すメリット

補助金の申請

新規創業では多くの費用がかかります。最近のお問い合わせでも創業支援の相談を多くいただきますが、メインはやはり使える補助金がないのかということになってきます。国や各自治体も創業者の支援には積極的ですので、いろいろと補助金があるので使えるものはぜひ活用していただきたいものです。

一例として「小規模事業者持続化補助金」の補助対象者の範囲は、開業している事業者となっています。小規模事業者持続化補助金を考えているのであれば、開業届は先に出しておく必要があります。
地方自治体で行っている補助金の中には、新たに創業する方を対象にしている補助金もありますので、ご自身の事業所がある自治体に合わせて対応を変えていけばよいかと思います。

金融機関からの借入

開業にかかる費用を自己資金ですべて集めている方よりは、どこかからの借入をしている方の方が多いのではないでしょうか。事務所とパソコンがあればできる事業は別ですが、テナントを構えたり従業員を雇ったりするとなると初月から出費が多くかかります。運転資金を借り入れするとなると、開業届は必要になってくると思います。私が融資をお願いした金融機関では開業届の控えを提出した記憶があります。

金融機関からの借入を考えているのであれば開業届の提出は先に行っておく必要がありそうですが、借入をしなくても済むのであれば時期を調整してもよいのかもしれません。

私がやってよかったこと

広告の効果は遅効性

私は、小規模事業者持続化補助金を使って認知を拡大していくことを目指していましたので、開業届は早めに提出しています。先に買っておけばよかった備品もありましたが、当時はそこまで考えが回りませんでしたのでとりあえず演技のよさそうな日を選んで出しに行ったことを覚えています。

補助金の補助事業に沿っていくつかの広告を使いましたが、効果は遅れてくると感じています。中華料理が食べたくなった時にふと浮かんでくる町中華のように、補助金が必要になった時に補助金もやっている事務所として思い出してもらえたらよいなと思います。
何度かチラシやDMも送りましたが、送った直後の反響は0.5%未満でした。しかし、数カ月から半年も経った今になってお電話をいただくことも増えてきました。あの時のチラシを捨てずにとっておいてくれたことにとても感謝しています。

追加融資はまだお願いしていないので分かりませんが、開業の前後に融資をお願いするのと、1年経ってからお願いするのとでは融資担当者の受け取り方も変わる気がします。開業前後であれば事業計画書から受ける期待値も考慮してくれるような気がしますが、1年経った実績をもとにしたと事業計画書では融資の判断は厳し目にせざるを得ないように考えてしまいます。そう考えると、最初に融資を受けておいてよかったと感じています。

終わりに一言

先行投資として認知拡大の手を打ち、3年以内に大きく黒字となるような事業計画で営業を続けていけば開業費の扱いはどちらでもいいのかもしれません。早めに開業届を出して、事業として開始したらどうだという当時の先輩経営者からのアドバイスは私には正しかったと実感しています。
開業にお困りの方、補助金について知りたい方はご相談に乗っていますので、お気軽にお問い合わせください。

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