建設業の労災保険と雇用保険

労働法・労働保険

東海地方の田舎町、岐阜県美濃加茂市で【社労士・コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
社労士として仕事をやっていますと、取得や喪失など定期的に発生する手続きから、36協定や年度更新のように1年に1回のペースでしか発生しないものまでさまざまあります。
その中で、新規適用は比較的対応することが少ない手続きの一つなのかなと感じていますが、幸いなことに数件の新規適用を行うことがありました。しかし、困ることがありそのあたりをまとめておきたいと思います。

さて、今回は建設業の労働保険の新規適用について以下の3点にまとめました。

  • 労働保険が3つある
  • 元請けになったとき
  • 手続きの流れ

労働保険が3つある

二元適用となる

労働保険を成立させる際に、ほとんどの事業では一元適用事業で処理されています。これは、労働保険と呼ばれる労災保険と雇用保険の納付等は、制度としては別のものではありますが一緒した方が効率的であるということからまとめて処理されるためです。
しかし、農林漁業や建設業等は事業の実態を考えたときに、区別する必要があることから別々に処理されていることから二元適用事業となっています。

別々で処理される労災保険と雇用保険が2つの労働保険です。そして、3つ目の労働保険が事務所の労災保険となります。
現場で作業を行う労働者と事務所で作業を行う労働者では災害の危険度が異なります。
そのため、事務所内や倉庫などで作業を行う可能性がある場合は、事務所の労災保険を成立させておく必要があります。

特別加入について

労災の正式名称は労働者災害補償保険法という法律です。
名前の通り、労働者に対しての災害を補償するための制度となっています。
一人親方や会社の経営者が現場に出ることもありますが、その場合は労働者ではありませんので、労災保険は対象外となります。
特別加入の制度は一人親方や経営者でも労災の対象となれるような制度となっています。
詳しくは以前にまとめていますので、ご興味がある方はぜひご一読ください。

元請けになったとき

請負事業が一括になる

事業の規模が大きくなり元請けとして仕事をするようになると労働保険の扱いも若干変わります。
元請けで仕事をするようになると、下請けとなる事業所の労災保険までを元請けの事業所が行なうことになります。
その場合は、労働保険料の納付は元請けの事業所が責任を持って行う必要があります。

前述の一人親方が現場に来ることが分かっていれば、特別加入をしてもらう必要があります。
元請けの事業所で労災保険に加入していても、一人親方は特別加入をしていなければ労災保険のたいしょうとなりません。そのため、万が一のときの補償をどこからも受けることができないということになってしまいます。

手続きの流れ

それぞれで手続きを行う

建設業で労働保険を成立させることになったときには、現場の労災保険、事務所の労災保険、雇用保険の3つの保険となるとご説明しました。

(1)労災保険(2)雇用保険※一元適用の場合
どこに所轄の労働基準監督署所轄の公共職業安定所所轄の労働基準監督署
いつまでに保険関係成立から10日以内保険関係成立から10日以内保険関係成立から10日以内

簡単に二元適用事業と一元適用事業の違いをまとめました。
上記の表にある(1)を行ったあとに、(2)を行います。同じ建物内や近隣に所轄の労働基準監督署と公共職業安定所がある地域はよいのですが、離れていたりすると少し面倒に感じます。電子申請をすればそれほど手間ではありませんが、現地に行って手続きをするとなると、距離的に近いところの方が楽だなと感じます。

労働保険料

労働保険料は原則として、賃金総額に保険料率をかけた金額で算出されます。
現場に出ていて、事務所でも作業をしている労働者は、それぞれの労務をしている時間で按分して計算することができます。
保険料率は事務所の方が低く設定されていますので、正しく処理をすることで労働保険料額を少し抑えることもできます。

終わりに一言

社労士試験を勉強しているときの徴収法はあまり得意ではありませんでしたが、実務を行うようになってくるとよく出てくる内容がほとんどです。ややこしい内容も多くありますので、調べてみても分からないという事業主の方はお気軽にご相談いただければと思います。

タイトルとURLをコピーしました