高齢者の採用と助成金の注意点

労働法・労働保険

東海地方の田舎町、岐阜県美濃加茂市で【社労士・コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
私が関与している顧問先では、最近新しく採用できそうだという話をよく聞きますので、比較的よい会社様ばかりなのかなと感じています。
社会保険などの手続きのために細かい情報をいただくのですが、年齢が高い方の割合が増えているような気もしています。
若年者の方が、長い時間をかけてキャリア形成ができる反面、時間がかかるというデメリットもあります。

さて、今回は高齢者の転職と助成金について以下の3点にまとめました。

  • 高齢者の転職活動
  • 採用で使える助成金
  • 採用前に気を付けること

高齢者の転職活動

定年後の再就職の増加

一昔前までは、定年退職したあとは年金をもらいながら優雅に隠居生活を過ごすという時代もあったかもしれません。
ご存じの通り、さまざまな要因から定年後の人生が長くなってきていること、定年を迎える年齢となってもまだまだ元気な方が多いこと、といった理由から再就職を選ぶ方も増えてきています。
2025年4月の高年齢者雇用安定法の改正に伴いまして、定年となる年齢の引き上げや継続雇用制度の導入が求められるようになりました。これにより、より多くの方が定年後に同じ企業で再雇用を目指すということも増えてきます。
再雇用以外にも、まったく別の企業への転職という選択も増えてきている結果が、最初に申し上げた年齢の高い方の採用の増加にもつながっているのかもしれません。

定年年齢の引き上げや継続雇用制度を導入する企業は、規模に関わらず増えてきている傾向にあります。
ただ、65歳までを定年としている企業の割合が高いことも浮き彫りになっていますので、退職後に再就職を目指す方が一定数いらっしゃるのではと推測しています。

従業員数定年年齢継続雇用制度導入
廃止60歳~65歳~70歳
21人~30人6.5%58.9%30.0%4.7%25.3%
31人~300人3.3%65.5%30.8%3.3%25.8%
300人以上0.7%74.3%24.1%1.0%24.0%
厚生労働省「雇用確保措置の実施状況(令和5年6月1日時点)」https://www.mhlw.go.jp/content/11703000/001357148.pdf

採用で使える助成金

ここからはよく聞かれる助成金として2つご紹介します。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

まず1つ目が特定求職者雇用開発助成金です。略して、特開金(とっかいきん)と呼ばれている助成金です。
これはハローワークが求職者を紹介してくるときに教えてくれることもありますので、ご存じの方も多いと思います。

簡単にまとめると、就職が難しいと思われる人を、ハローワークや職業紹介事業者からの紹介で採用した場合にもらえる助成金です。
設備導入が必要ない助成金ですので、採用を考えている企業で該当する方が応募してくれた場合には嬉しい助成金です。紹介のときに案内もしてくれますので、知らなかったということもないでしょう。

対象労働者支給額
高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等最大60万円
重度障害者等を除く身体・知的障害者最大120万円
重度障害者等最大240万円

他にもコースがありますが、共通しているのは紹介を受ける必要があるということです。

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

そして2つ目が65歳超雇用推進助成金です。これは管轄が労働局ではなく「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)」という組織が担当していますので、ハローワークでもあまり詳しく教えてもらえません。

こちらの助成金の65歳超継続雇用推進コースをまとめると、「65歳以上へ定年を引き上げる」、「希望者全員を対象とする66歳以上への継続雇用制度の導入」、「定年の定めの廃止」、「他社による継続雇用制度の導入」の4つのうちのどれかを実施すればもらえる助成金となります。

措置内容支給額
65歳以上へ定年を引き上げる最大160万円
66歳以上への継続雇用制度の導入最大160万円
定年の定めの廃止最大100万円
他社による継続雇用制度の導入最大15万円

どの措置を取るかで金額は変わりますが、スキルや意欲があって長く働いてもらえる人材が確保できて、助成金がもらえるよい助成金と言えます。
注意点としては、就業規則を直すために必要な費用がかかっていないといけないという点です。

採用前に気を付けること

若年者と同じように扱わない

年齢を重ねていても現役並みのやる気がある方ですと、待遇面で折り合いがつかないこともあるかもしれません。
どのような仕事を任せたいのかということや、どの程度の条件であればお願いできるのかをしっかりと考えておかなければならないことには注意が必要です。

また、就業規則の定年を超えている方を採用してしまわないようにお気を付けください。
定年による退職がなくなってしまうとみなされてしまうと、助成金の対象ともならない可能性があります。

終わりに一言

知っていればもらえたのに、と言うセリフをよく聞きます。
助成金や補助金は、事後申請は基本的にNGです。何かをしようと考えているときには、事前に動き始める必要があります。
自社に合う助成金や補助金があるのかということや、気軽に相談できる顧問をお探しの方がいらっしゃいましたらまずはお話だけでもお聞かせください。お問い合わせをお待ちしております。

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