東海地方の田舎町、岐阜県美濃加茂市で【社労士・コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
労災という言葉は、労働者の身に何かが起きたということですので、事業主はもちろんのこと、私としてもあまり聞きたい言葉ではありません。
労働者はすべて労災保険の対象となりますし、業務内容によっては役員の一部も対象となります。
令和6年の法改正で特別加入の範囲が拡大されたこともあり、今一度確認しておきたいと思います。
さて、今回は労災保険と特別加入について以下の3点にまとめました。
- 労災保険の制度概要
- 特別加入者とは
- 最近の法改正
労災保険の制度概要
業務中や通勤中の保険
労災保険とは、正式には労働者災害補償保険という保険の制度になります。
名前の通り、労働者を対象としていて、業務中や通勤中の災害に対して保険給付を行う制度となっています。
業務中のケガであればなんでも良いかと言われるとそうではありません。業務をしている最中(業務遂行性)であって、ケガの原因が業務によるものであること(業務起因性)が求められることとなります。
業務を続けていることによって、かかってしまう病気もその対象となります。
その他にも、通勤途中の事故によってケガをしてしまった場合も対象となります。
労働者を対象とした労災については、以前に詳しく書いた記事がありますので、気になる方はこちらもご一読くださると嬉しいです。
対象とならない人
労働者を対象としている保険であることから、労働者であれば正社員、契約社員、パート、アルバイトなどの雇用形態に関わらず、労働の対価として賃金を受けている人はすべて対象となります。
ここで出てくる対象とならない人は、法人の役員と同居の親族のことになります。
法人の取締役の中には、役職者として現場の従業員と一緒に働く方もいると思います。その方は、報酬などの面で労働者と同じように扱われているのであれば対象となることもありますが、法人の代表者は対象となることはありません。
同居の親族も原則として対象とはなりませんが、いくつかの条件を満たす場合に限って対象となることもあります。
・就労実態が他の労働者と同じで、賃金も同じように支払われていること
・勤怠管理が就業規則に定められていて、管理が労働者と同じようにされていること
・業務内容が事業主の命令に従っていることが明らかなこと
保険を天引きしたり、年度更新で保険料を納めることはできますが、事故が起きた時に給付が受けれないということも起こっていますので、今一度対象となっているかを確認しておきましょう。
特別加入者とは
経営でも加入できる
前述の通り、労災保険の対象は労働者となっており、経営者は加入することはできない制度となります。
しかし、中小事業主の中には労働者と同じように現場に立ち、働いている方もいらっしゃり、その方が事故にあった時にも保証されるように加入することができるようにする制度が特別加入という制度になります。中小事業主とは、ある一定の人数以下の従業員を雇用している事業主となります。
中小事業主が特別加入するためには、2つやらなければならないことがあります。
①雇用する労働者について、保険関係が成立していること
②労働保険の事務処理を労働保険事務組合に委託していること
事務組合は各都道府県ごとに経営労務センターというものがあったり、地域ごとにある商工会議所や商工会も事務組合をやっていたりします。
弊所は事務組合を持っていませんが、大きい事務所であれば社労士事務所でも持っている事務所もあります。
事務組合に業務を委託すると言うことで、追加の費用がかかることはありますが、特別加入ができないと受注できない仕事があると言うことも聞きますので、必要経費なのかもしれません。
最近の法改正
労災保険法では、ここ数年では毎年のように特別加入の対象者が増える改正が行われています。
令和6年改正
令和6年11月から、フリーランスの方が、業種や職種を問わずに特別加入することができるようになりました。
ここで言うフリーランスとは、企業や別のフリーランスから業務委託で仕事を受けている人のことです。消費者のみから仕事を受けている場合は対象となりません。
令和4年改正
令和4年4月から、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が対象に加えられました。
加えて令和4年7月から、歯科技工士が対象に加えられました。
令和3年改正
令和3年9月から、自転車を使用して貨物運送を行う者とITフリーランスが対象に加えられました。
終わりに一言
労災保険の特別加入をしたいと考えている方からの問い合わせをいただくことがあり、情報をまとめてみました。
法改正が多いことや、社労士事務所だけでは対応しきれないこともありますが、事業主の仕事につながるのであれば積極的にお手伝いをしていきたいと感じました。もしお困りの事業主の方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談いただければと思います。