東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
個人事業主になると、会社員のときと変わり国民年金や国民健康保険に加入することになります。会社員のときは給与から天引きだったため負担は感じにくいですが、国民年金と国民健康保険は天引きではないため負担感が大きくなります。
さて、今回は個人事業主の社会保険料負担と将来の年金について以下の3点にまとめました。
- 個人事業主の社会保険とは
- 社会保険料の負担
- 未納となるとどうなるか
個人事業主の社会保険とは
国民年金とは
国民年金は個人事業主になってからのものという認識がある方もいるかもしれませんが、実は会社員として厚生年金に加入していることで国民年金の2号被保険者となっています。
ご存じの方も多いですが、日本の年金システムは2階建ての構造をしています。厚生年金に加入しているときは厚生年金から年金を受給することもできますし、国民年金からも年金を受給することもできます。
退職することで、国民年金2号被保険者の資格を失い、国民年金1号被保険者に変わることになります。
加入している年金が国民年金だけとなりますので、受給できる年金は国民年金からのみとなります。
国民健康保険とは
会社員のときの健康保険は協会けんぽや健康保険組合に加入していますが、個人事業主となると自治体が保険者となる国民健康保険に加入することになります。
健康保険の資格を喪失するまでの加入期間や喪失後の手続きによっては健康保険の資格を任意継続するという制度も設けられています。
なお、加入する保険の種類が変わったとしても保険適用の範囲は大きくは変わりませんが、自治体によっては一部対象外となる内容もあります。
法律上は任意給付となっている出産育児一時金は多くの自治体で支給されていますが、傷病手当金や出産手当金はほとんどの自治体では実施されていません。
社会保険料の負担
国民年金と付加年金
国民年金の納付額は加入者全員が所得や年齢などに関係なく同額となります。
基本額は17,000円となり、毎年の改定率を掛けた金額が各年度の保険料額となります。令和6年度は16,980円となります。
この金額は各月払いとした場合で、1年分や2年分を前納することで総額を少し抑えることができます。
支払いを忘れてしまいがちな人は口座振替などをしておくと手間が省けてよいかもしれません。
所得が大幅に減ってしまったなど、納付が難しい場合は免除の手続きもできますので、無理せずに相談してみましょう。
国民年金だけに加入している人は、基本額に加えて付加年金というものを納めることもできます。
付加年金は毎月400円を年金に加算して納める制度です。付加年金を納めておくことで、老齢基礎年金を受給するときに「200円×納めた月数分」が年金額に加算されて受給できます。
例)5年間付加年金を納めたとき
納付額:400円×60か月=24,000円
受給額:200円×60か月=12,000円/年
65歳から受給を始めたとして、67歳まで受給すれば納めた金額以上を受給できることになります。
それ以上受給できるのであれば受給額を増やすことができますので、おすすめできる制度と言えます。
国民健康保険と任意継続保険
国民健康保険は昨年の所得や世帯構成などにより保険料額が変動します。
毎年6月くらいまでに今年の保険料額が決まって通知される流れとなります。
個人事業主になってすぐに、ある程度の収益が見込めるのであればそのまま国民健康保険の手続きをすれば問題ありません。
世帯構成によって変動があるため一概には言えませんが、個人事業主になった直後は任意継続を選び、翌年から国民健康保険にする方が保険料額を抑えることができるかもしれません。
任意継続をするためには加入期間が2か月以上あることや、喪失から20日以内に届出なければならない点などの注意点もありますのでご検討中の方はご注意ください。
以前は任意継続をやめるときの手続きが少し面倒な部分がありましたが、法改正で簡単になりましたので選択肢に入れてもよいかもしれません。
未納となるとどうなるか
未納の割合
年金分の未納分を納めることができるのは2年とされています。
厚生労働省のプレスリリースによりますと、令和2年度分の保険料を納めることができる令和4年度の最終納付率は80.7%となっています。
年齢別で見てみると割合に差が出ているのが特徴的です。最も低いのは25歳~29歳の71.96%で、最も高いのは55歳~59歳の85.95%となります。(https://www.nenkin.go.jp/info/torikumi/chiikikaigi/shimane.files/20-6.pdf)
このような資料を見ていると、年齢別だけでなく都道府県別でも特徴が表れていてなんか面白いなと感じます。
どうなるか
保険料を滞納すると、督促状で納付を促されることになります。督促に従わなければ、滞納処分となります。督促をされると、延滞金の対象にもなりますので、結果的に払う金額が増えてしまう可能性もあります。
一時的な所得の減少であれば、前述している免除申請をするなどしておく方がよいと思われます。
では、最後まで支払いをしなかったらどうなるのでしょうか。
まず、将来の年金額が減ってしまいます。これは年金の仕組みが納付している期間によって決まるためです。あまりにも納付をしていないと、そもそももらえないこともあります。
そして、万が一が起きてしまったときの影響はとても大きくなります。遺族年金や障害年金にも保険料の納付が要件に入っています。年金が受け取れないとなると将来の生活が不安定になりますので、しっかりと納めておきましょう。
例)基本額の保険料で40年間国民年金を納めていて、令和6年度の受給額(月額68,000円)を今後受け取る場合
納付額:17,000円×12か月×40年=8,160,000円
8,160,000円÷68,000円=120か月=10年
男性の平均寿命81歳まで受け取ると約1,300万円
女性の平均寿命87歳まで受け取ると約1,800万円
あくまで平均寿命であって健康寿命ではありませんので、お金があっても好きなことに使えないというケースも起こり得ます。
老後に安心して生活できるためにもしっかりと納めておきたいです。
終わりに一言
忘れていたというお声や、払いたくないというお声を聞くこともありますが、個人的には払っておくことをおすすめしています。
気になることやご質問などありましたらお気軽にお問い合わせください。