東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
業務が原因でケガをしてしまったり病気になった場合は労災になることはよく知られていますが、今まではあまりそのような話を聞くことがありませんでした。
ただ、最近になって相談があったり、労災になった事例を聞くことが増えてきました。
さて、今回は業務に関するケガや病気と労災保険について以下の3点にまとめました。
- 労災保険の対象とは
- 保障される内容
- 自社で起きてしまったら
労災保険の対象とは
業務に起因するもの
労災保険の対象のメインは業務に起因するケガや病気の保障になります。
業務に起因すると書いてあると難しいように聞こえますが、「業務遂行性」と「業務起因性」の2点が判断基準となります。
・業務遂行性
これは、業務をしている最中に事故が起きてしまったかということです。
社労士の過去問では、不発弾をツンツンしていたら労災になるかという問題が出てきますが、現代では非現実的だなと思いながら問題を解いていました。
・業務起因性
これは、その業務を行うと災害が起きることが想定できたかということです。
他の従業員であっても、同じ作業をしていれば災害が起きた可能性が高ければ業務起因性はありだと判断されます。
業務遂行性がありで、業務起因性もありであれば業務上の災害であると判断されます。
ここで言う業務には、本来の業務だけでなく、本来の業務に付随する行為も含まれるというところです。
準備中や着替え中、トイレなども業務中であると判断されています。
通勤に起因するもの
意外と忘れがちなのが、通勤中のケガも労災の対象になるということです。
通勤となっていますが、家を出てから会社に着くまでのすべてが対象となります。
また社労士の過去問を持ち出して恐縮ですが、家の玄関を出てから門を出る前にコケて骨折した場合は通勤災害になるかという問題もよく出てきます。
通勤災害で気を付けておかなければならないのは、会社が把握している合理的な通勤経路から外れたところでのケガは対象にならないということです。
帰りに買い物に寄ったスーパーでのケガは原則対象になりません。また、仕事終わりに同僚と食事に出かけた後も同様に対象になりません。
たまに、通勤手当をごまかして受けとっているケースを耳にしますが、何かに巻き込まれたときの損失を考えるといい選択とは言えないと思われます。
補償される内容
療養費の補償
療養費の保障は、「療養(補償)等給付」と言う名前の給付になります。
労災病院や労災保険指定医療機関での治療を無料で受けることができます。
もし、やむを得ない理由で対象ではない病院で治療を受けた場合は、いったん治療費の全額を負担してあとで全額が給付されることになります。
通院するための交通費は、一定の要件を満たすことで支給を受けることができます。
休業期間中の補償
ケガを負ってしまうと仕事を休まざるを得ないことも出てきます。
その場合は、「休業(補償)等給付」を受けることができます。
治療が長引いてしまった場合には、「傷病(補償)等給付」を受けることができます。
もし治ったあとに障害が残ってしまった場合には、「障害(補償)等給付」を受けることができます。
休業(補償)等給付
いつから・・・休業4日目から
いくら・・・1日につき、給付基礎日額の60%+20%で合計80%(給付基礎日額は原因となった事故直前3か月分の賃金を歴日数で割った平均賃金)
傷病(補償)等給付
いつから・・・1年半を経過しても治っていないとき
いくら・・・傷病等級により日数は異なる(313日~245日分)
障害(補償)等給付
いつから・・・ケガや病気が治ってから(症状の固定を含む)
いくら・・・障害等級により年金と一時金がありそれぞれの日数は異なる(年金:313日~56日分、一時金:503日~56日分)
その他の補償
労災保険では、他にも亡くなってしまった場合の、「遺族(補償)等給付」や、「葬祭給付」があったり、介護が必要となってしまった場合の、「介護(補償)等給付」があります。
ケガとは縁の少ない事業所であったとしても、何が起きるか分かりませんのでここまで手厚い補償があるのは労働者としてはうれしいところです。
業務を原因とするケガや病気ですので、本来であれば全額を会社が負担するところですが、負担軽減のために会社が労災保険料を負担して納める仕組みとなっています。
労働者が納めることはありませんので、給与明細には出てこなくあまり身近には感じにくい社会保険の一つかもしれません。
自社で起きてしまったら
死傷病報告書を提出する
万が一、自社で事故が起きてしまいケガを負った従業員がいる場合は、死傷病報告書の提出が必要となります。
書く内容自体は難しいものではありませんが、通常の業務に加えて、ケガをした人のフォローをしながら書くのは簡単ではないかもしれません。
労基署で支援をしてくれますが、専門家である社労士を頼ってもよいかもしれません。
労災保険にはメリット制という制度がありまして、労災が少ない事業所の保険料がお得になるようになっています。
これをご存じの会社は、労災が起きたとしても死傷病報告を出さないということもあるようです。(俗に言う、労災隠し)
ただ、交通事故を起こしたら警察に届けなければならないように、業務が原因でケガをした労働者がいたら労基署に届けなければなりません。
ケガで働けない期間の補償を会社がすべてするとしてもです。
終わりに一言
最近問い合わせを受けることが増えてきたので、調べてみたことをまとめてみました。
他の制度に比べて発生頻度が低いこともあり、調べてみることで新しい発見もいくつかありました。
労災は起きないことが一番ですが、起きてしまったときには素早い対応が求められます。
顧問先でなくても相談に乗っていますので、お困りの方はお気軽にお問い合わせください。