東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
私が以前働いていた会社もですが、今の顧問先にも固定残業代を採用している会社がいくつかあります。
管理が簡単にはなりますし、従業員からすると業務を早く終えることができれば短時間で高い報酬を得ることができる良い制度だと感じます。
ただ、この制度を採用するためにはいくつか気を付けておかなければならないこともあります。
さて、今回は固定残業代を採用するときの時間管理と超過分の賃金について以下の3点にまとめました。
- 固定残業代とは
- 採用するメリットは
- 採用するときの注意点は
固定残業代とは
一定時間までの残業代が含まれている
固定残業代を採用している会社では、「固定残業手当」や「定額残業手当」、「みなし残業手当」などという名目で毎月の給与に加算されて支給されていることがほとんどだと思います。
一部では、基本給の中に固定残業代を含めて計算しているケースもありますが、計算が煩雑になるためあまりおすすめはできません。
一例ではこのようなケースがあります。
・基本給:320,000円(1日8時間×20日稼働)
・固定残業手当:50,000円(残業20時間分)
この場合、1カ月間の残業時間の残業時間が何時間であっても50,000円が手当として支給され、総支給は370,000円となります。
そして、とある月の残業代が30時間だったとすると、超過している10時間分は割増賃金として25,000円(2,000円×1.25×10時間)を支給する制度となります。
採用するメリットは
企業側のメリット
一番大きいのは人件費の管理が容易になる点です。毎月の残業代の煩雑な計算が簡単になるのは大きいです。
また、従業員としても残業代で稼ぐことがむずかしくなるため、効率よく働く意識が根付くことで効率的な職場になり残業時間が削減できるという点もあります。
管理面以外にも、求職者に対して提示する給与総額も固定残業代を含めること魅力的に見せることができますので、自社を選んでもらえる可能性が高まります。
労働者側のメリット
労働者側からすると、残業時間に関わらず一定額が手当として入ってきますので、収入が繁閑に左右されず安定するという点があげられます。給与が安定しますので、やりくりがしやすくなるというのはメリットとしても大きいかと考えられます。
そして、効率的に仕事を進めることで、プライベートの時間を充実させたり、最近流行りのリスキリングに充てることもできます。
採用するときの注意点は
企業側のデメリット
デメリットの一番大きいところは、残業時間が短くても一定額を支給しなければならないという点でしょう。
人数が増えてくると思ったより高額となることもあります。就業規則などに見直しの規定を設けておいて、年に一度くらいは見直すことをおすすめします。
メリットの方で給与計算の話が出ましたが、固定残業代を支給しているからと言って労働時間を管理しなくてもよいことにはなりません。
タイムカードやこれに準ずるもので出退勤の時間の管理はしなければなりません。
また、採用するときになんとなくで始めてしまうと、適切な固定残業代を支給できておらず離職のリスクや、退職した労働者から訴訟のリスクを抱えてしまいます。
先ほどの一例と似た事例を出します。
・基本給:320,000円(1日8時間×20日稼働)
・固定残業手当:50,000円(残業40時間分)
先ほどと異なるのは、固定残業代に含まれている時間数です。
ここでは40時間としましたが、そうすると少しおかしいことになります。
基本給から求められる時間単価は2,000円です。(320,000円÷160時間)
2,000円×1.25×40時間であれば、100,000円が固定残業代となります。
逆算すると、50,000÷1.25÷40時間となり、1,000円となり東海地区の最低賃金を下回ってしますことになります。
簡素化できるいい制度ではありますが、しっかりと賃金が支払われているのかという点には注意が必要です。
労働者側のデメリット
労働者側のデメリットとしては、固定残業代に含まれている時間数が長時間となっているときです。
含まれている残業時間で割ってみると思ったより良くない条件であったということも起こります。
また、固定残業代として支給することで、基本給を低く抑えている可能性もあります。
追加の残業代の計算は基本給や固定的な手当をもとに計算しますので、残業代としてもらえる額が低額になることもあります。
固定残業代に含まれている時間があったとしても、効率よく仕事を進めるよう心掛け、短い時間で効率よく働けるようになるとよいです。
終わりに一言
私が以前いた会社は営業手当と言う名目で固定残業代が支給されていました。
もちろん残業はありましたが、早めに終われるときはプライベートの時間に充てることもできていましたし、良い制度であったなと感じています。
給与制度や評価制度は最近お問い合わせが増えてきている内容でもあります。固定残業代の導入に限らず、評価制度の変更や就業規則の変更などが必要となりましたら、お気軽にお問い合わせください。