東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
変形労働時間制を導入している企業は令和3年度調査で約6割となっています。企業規模に関わらず半分以上が採用しているとなっていますが、いまいちその制度のことが分からないですよね。
さて、今回は変形労働時間制について以下の3点にまとめました。
- 変形労働時間制の種類とは
- 事業主と労働者のメリット
- 似たような制度
変形労働時間制の種類とは
大きく3種類+1種類
変形労働時間制と呼ばれるものは、変形労働時間制(1ヶ月単位、1年単位、1週間単位)とフレックスタイム制に分けることができます。
各制度をうまく活用することで法定労働時間の時間配分が可能になり、所定労働時間が法定労働時間を超えても時間外労働として取り扱う必要がなくなります。
この制度を使うには、対象となる労働者を特定する必要があり、妊産婦、18歳未満には適用できない点に注意が必要です。
1ヶ月単位の変形労働時間制
業種や職種によっては月末や月初に業務が集中することがあります。
1ヶ月以内で業務の繁閑がある場合に柔軟に対応ができる制度となります。
変形期間を4週間(28日)とすると、40時間×(28日÷7)=160時間までの範囲内で所定労働時間を決めれば良いことになります。
1週目40時間、2週目30時間、3週目35時間、4週目55時間とすると160時間となり4週目の40時間を超えた時間も時間外とはなりません。
定める場合は、労使協定か就業規則に記載が必要となり、各日と各週の労働時間をすべて特定する必要があります。
業務が急に忙しくなったからと言って任意に時間を変更することはこの制度ではできません。
1年単位の変形労働時間制
業務の繁閑がもう少し長く、季節単位で起こる場合には1年単位の変形労働時間制を採用することができます。
期間は3ヶ月単位でも6ヶ月単位でも決めることができます。
期間が長くなることで労働者の負担も重たくなります。そのため労使協定の締結が必須となっていたり、あらかじめ対象期間の全期間について労働日と労働時間を特定することが必要になります。
ただ、シフト制などあらかじめ全てを決めることが難しい場合もありますので、最初の期間以外については労働日数と総労働時間を定めればよいことになっています。
フレックスタイム制
上記2つと違い、こちらは労働者の裁量で清算期間の始業と終業の時刻を自由選択することができるようになります。
ワークライフバランスを保ち、効率的に働くことで労働時間の短縮を図ることが目的です。
出社や退社が自由なフレキシブルタイムと、必ず労働するコアタイムをそれぞれ決めることで全体の会議なども設定しやすくなります。
清算期間は3ヶ月以内となるため、6月の週平均50時間、7月の週平均40時間、8月の週平均30時間とすることも可能です。お子さんが夏休みで家にいるため子供と過ごす時間を増やすこともできます。この場合は、6月の割増賃金の支払いはありませんが、8月の欠勤扱いも無くなります。
1ヶ月以内の清算期間としているのに週平均40時間を超えてしまっていたり、1ヶ月超〜3ヶ月以内の生産期間としているのに週平均50時間を超えてしまう場合は時間外労働となります。
定める場合は、就業規則に記載し労使協定の締結が必要です。
変形労働時間制まとめ
種類 | 1ヶ月単位 | 1年単位 | フレックスタイム制 |
要件 | 労使協定or 就業規則等 | 労使協定 | 就業規則+労使協定 |
期間 | 1ヶ月以内 | 1ヶ月超〜1年以内 | 3ヶ月以内 |
労働時間の総枠 | 週平均が40時間以内 週と日の労働時間を決める | 週平均が40時間以内 | 週平均が40時間以内 |
労働時間の限度 | なし | 1日10時間 1週間52時間 | 1ヶ月超は50時間 |
届出 | 労使協定で定める場合 | 必ず必要 | 1ヶ月超の場合 |
事業主と労働者のメリット
業務の繁閑に合わせた働き方ができる
1ヶ月単位は月末月初など特定の期間が忙しい仕事が毎月ある場合に、1年単位は季節的に特定の期間が忙しい場合に、それぞれの割増賃金を抑えることができます。
手持ち無沙汰の従業員が定時になるまでとりあえず座っていて、忙しい時には時間外手当を支払うとなると会社としての負担も重たくなってしまいます。
また、労働者としては業務が少ない時期は早めに帰ることもでき、早退扱いにもならないためお給料に影響が出ることもありません。忙しい時とのメリハリをつけた働き方ができます。
それぞれの文中にも書きましたが、お子さんの夏休みに合わせて労働時間を短くしたりもできますし、月の真ん中は早く仕事を切り上げて習い事や趣味に当てることでワークライフバランスを充実させることができます。
似たような制度
みなし労働時間制
みなし労働時間制とは、実際の労働時間に関わらず一定時間を労働したとみなす制度です。
直行直帰の営業や研究開発職で採用されていますが、採用している企業は13%(令和3年度調査)となっており、上記の変形労働時間制と比べ少ないのが現状です。
コロナ禍で増えた在宅勤務などでも利用可能な制度になりますが、それぞれで定められている要件が少し難しいことも採用が進んでいない原因なのかもしれません。
終わりに一言
上手に使うことで事業主としても労働者としても多くのメリットがあります。導入を検討される場合はぜひ専門家のアドバイスを受けてみてください。