退職日の選択と社会保険料の負担額

社会保険

東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
退職日は〇日がお得!?という動画やサイトをよく目にします。
社会保険料の負担は会社の利益や手取り額に直結しますので、事業主、労働者問わず興味がある内容ですので、記事も多数出ているのだと思います。

さて、今回は退職日は〇日がお得!?について、社労士の視点からまとめた内容を以下の3点にまとめました。

  • 社会保険の被保険者とは
  • 社会保険料の負担額は
  • お得になる退職日はいつ

社会保険の被保険者とは

入社日から退職日の翌日まで

まず、社会保険の被保険者となるとはどういうことを言うのかを確認しておきます。
広義の社会保険には健康保険や厚生年金保険だけでなく、労働保険と呼ばれる雇用保険や労災保険も含まれています。
パートやアルバイトで働く方、学生さんの適用については細かなルールが存在しますが、正社員やフルタイムと呼ばれる雇用形態で働く方はざっくり週30時間以上働く場合には入社日から加入することになっています。
なお、パートやアルバイトで働く方は、以下の要件を満たすことで加入することになっています。
①51人以上の企業で働いている
②週の所定労働時間が20時間以上
③月額の賃金が88,000円以上
④昼間の学生ではない
⑤2か月を超えて働く見込みがある

では、退職した場合はどうなるのでしょうか。
退職した場合は、退職日の翌日の月の前月まで被保険者となるとなっています。
そして、保険料は、被保険者でなくなった月の前月まで負担することになっています。
少し分かりづらいですので、具体的な例で見ていきましょう。

退職日1月31日退職1月30日退職
喪失日2月1日喪失1月31日喪失
社会保険料の負担1月分まで納付12月分まで納付

表を見ていただくと分かる通り、1月末日の退職ですと喪失日は翌月の2月1日となります。そのため、その前月まで、つまり例で言うところの1月分までを納付することとなります。

社会保険料の負担額は

労使で折半している

月末で退職するとその月の分までの社会保険料を負担しなければならないことは分かったかと思いますが、その保険料はだれが負担しているのでしょうか。
健康保険の保険料は約10%、厚生年金保険の保険料は約20%となっています。この金額を全額負担ではなく、労働者と使用者が半分半分で負担をしています。
つまり、労働者の負担としては約15%ということです。給与明細を見てみると、総支給の15%程度が社会保険料として引かれていることが分かるかと思います。

具体的に岐阜県で働く、月収30万円の35歳の営業職の人の負担額を見てみましょう。

項目金額料率
総支給(a)300,000
健康保険料29,7309.91%(全額)
厚生年金保険料54,90018/3%(全額)
雇用保険料4,6501.55%(全額)
社会保険料計(b)44,640(健康保険+厚生年金保険+雇用保険)÷2

これが個人事業主になるとどうなるのでしょうか。

項目金額
報酬見込み330,000年換算約400万で算出
国民健康保険料33,000約40万円÷12か月
国民年金保険料17,000基本的に一律
社会保険料計50,000国民健康保険料+国民年金保険料

会社働いており社会保険に加入している場合は、半額を会社が負担してくれていますので個人の負担は45,000円くらいとなります。一方で、個人事業主や失業中となりますと約50,000円を負担することになります。
健康保険には任意継続と言う制度がありますが、この事例では任意継続を選ぶことで結果的に社会保険の負担額が増えてしまう可能性が高いですので、素直に国保と国年に移行した方が良いと言えるでしょう。

お得になる退職日はいつ

立場によってお得は異なる

今までの記事でも書いていますが、社会保険の制度は会社員が優遇されていると言えます。
労働者の立場では、可能であれば、会社に長く所属して、社会保険料の負担を半額に抑えるということが良い選択かもしれません。
その観点で見ますと、お得な退職日とは、月末最終日であるかもしれません。
ただし、退職したあとに配偶者の扶養に入ることができる場合はこの限りではありませんのでご注意ください。

逆に会社の立場では、退職日が後ろになることで、社会保険料の負担額が増えるということになります。
年金を負担したとしても、経営者が受け取る将来の年金額に影響があるわけではありません。
その観点で見ますと、月末最終日ではなく、その前日に退職した方が社会保険料の負担額は抑えることができると言えます。

ご注意いただきたいのは、社会保険料の負担を減らすことができるからと言って、最終日の前日に退職を促してはならないということです。
あくまで、労使が納得できる話し合いの上で退職日を決めておかないと、あとあと無用なトラブルを生む可能性もあります。

終わりに一言

私が常々思っているのは、経営者は経営に専念していただき、事務作業や定型業務は人に任せた方がよいのではということです。退職日をどうするかで悩んだり、トラブル対応に追われるのは本来の経営者の業務ではありません。

できることは外部の専門家を頼るなど、経営に専念できる体制を構築してください。
弊所では、労務に関することはもちろんのこと、経営に関してのアドバイスも行っています。お困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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