定額減税と実務における注意点

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東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
先日、定額減税の案内文章が届きましたが、なぜかお客様から聞かれることも増えてきました。近年の物価高や賃金上昇が遅れていることの対応策として行われるという程度の認識でした。

さて、今回は国税庁のHPを参考に、定額減税とその注意点について以下の3点にまとめました。

  • 定額減税の内容
  • 月次と年調時の対応について
  • イレギュラーなケース

私なりにまとめてみましたが、詳しくは国税庁のサイトをご確認ください。

定額減税の内容

対象者と金額

定額減税とは、令和6年分の所得税について、所得税額を定額で減らす特別控除のことを指します。これによって、給与をもらっている人は手取り額が増えることになります。そして、定額減税の適用を受けることができる人は、令和6年分所得税の納税者あり、令和6年分の所得税の対象となる合計所得金額が1,805万円以下の人となります。

ここでの注意点は次の2点です。
・対象者となる納税者は国内に住んでいる人になります。一部例外はありますが、海外に住んでいるは定額減税の対象とはなりません。
・給与所得者の場合、扶養控除等申告書の提出をしている方が対象となります。

定額減税の金額は、本人から30,000円、生計が同じである配偶者や扶養親族一人につき30,000円となります。個人の住民税に対しても定額減税があり、そちらは金額が10,000円となります。

給与所得者への事務処理

給与所得者の給与計算を税理士や社労士に委託している場合は問題ないかと思いますが、個人でやっている方は6月以降の給与支払いから変更点がありますので注意しておかなければなりません。

令和6年6月1日以降に給与や賞与を支払う際、源泉徴収税額からその時点の定額減税額を控除します。
年末調整の際、年末調整時点の定額減税額で清算します。
それぞれ、詳しく見ていきます。

月次と年調時の対応について

控除対象者を確認

令和6年6月1日時点で勤務していて、国内に住んでいる人のうち、源泉所得税額表の甲欄が適用される方を確認します。
対象者が確認できたら、個人ごとで月次減税額がいくらになるのかと控除した金額がいくらなのかを管理していくことになります。

ここでの注意点は次の人は対象にならないということです。
・令和6年6月1日時点で勤務していない人
・勤務はしているが国内に住んでいない人
・源泉所得税額表が乙欄や丙欄の人

仮に令和6年分の合計所得金額が1,805万円を超える見込みであっても月次減税は対象となります。結果的に1,805万円を超えた場合は年末調整で清算することになります。

年末調整を行うときに住宅ローン控除が適用される方もいますが、その場合でも年調所得税額までを同じように算出してから年調減税額を控除します

月次減税額の計算

対象者ごとの月次減税額は、配偶者や扶養親族の数によって変わりますので、以下のように計算しておきます。
例)同一生計の配偶者:有 扶養親族:2名
  合計3名になる→30,000円×3名=90,000円
  本人分の30,000円を加えて、120,000円となります。

ここでの注意点は、次の1点です。
・毎月の給与や賞与の時の源泉所得税額の計算に使う「扶養親族の数」とは違う場合がある

対象となる配偶者の合計所得金額が48万円を超えていると人数に加えることができなくなります。
逆に、所得者の合計所得金額が900万円を超えていた場合でも、配偶者の合計所得金額が48万円以下であれば人数に加えることができます。
また、16歳以下の子どもでも定額減税を計算するときの人数には加えることができます。今までの控除対象の扶養親族にはなりませんでしたが、違うため注意が必要です。

月次減税額は最初の月で確定しますので、それ以降に扶養親族の数が変わった場合は年末調整や確定申告を行うことになります。

給与支払時に控除

対象者と月次減税額が分かりましたら、支払いが早くきた分から控除をしていきます。

パターン①:月次減税額よりも控除前税額が大きい
この場合は全額を控除することができます。控除した後の金額を源泉徴収して月次減税の処理は終了となります。
例)控除前税額:40,000円 月次減税額:30,000円
  差額10,000円を源泉徴収します。
  それ以降の給与や賞与の支払い時は通常の源泉徴収を行います。

パターン②:月次減税額よりも控除前税額が小さい
この場合は控除後の源泉徴収は0円となります。控除しきれなかった分はそれ以降の給与や賞与の支払い時に控除していき、控除できる月次減税額がなくなったところで処理は終了となります。
例)控除前税額17,000円 月次減税額:60,000円
  6月給与17,000円-17,000円=0円(残:43,000円)
  6月賞与30,000円-30,000円=0円(残:13,000円)
  7月給与17,000円-13,000円=4,000円(残:0円)
  それ以降の給与や賞与の支払い時は通常の源泉徴収を行います。

定額減税額の控除を行った場合には、給与明細などのどこかに記載をしておきます。
給与の支払い者は、月次減税の処理をした後に納付書の記載と納付が必要であれば法定期限までに納付をします。

源泉徴収票の表示

年末調整を行うと源泉徴収票を発行します。その摘要欄に実際に控除した年調減税額を記載します。
一般的な記載としては以下の通りになります。
例)「源泉徴収時所得税減税控除済額○○円、控除外額0円」
もし、年末調整を行っていない場合は摘要欄に特別のことを記載する必要はありません。源泉徴収税額の欄には実際に源泉徴収した税額を記載すれば大丈夫です。

以上で、給与支払いから年末調整までの事務が終了となります。給与をもらう側としてはうれしい一方で、給与計算を仕事にしている人からすると正直手間が増えることにになります。

イレギュラーなケース

住民税は所得税とは違う

住民税の徴収方法が所得税と同じであれば分かりやすいですし、処理も簡単になるのかもしれませんがそうではありませんでした。そもそもの納税の方法が違いますので仕方のないことかなと感じています。
住民税は毎年6月から翌年5月の1年間に昨年の所得に応じて徴収されます。会社を経営していると、市役所などから従業員の納付書が届いているかと思います。
ここでの控除のされ方は、令和6年6月分の住民税は0円となります。そして、7月から翌年5月の11カ月間で、定額減税が控除された後の住民税を均等に納付することになります。

個人事業主の場合では、住民税の通知書が届いたら、第1期分として定額減税が控除されています。もし控除額が多かった場合は第2期分にも控除されることがあるかもしれません。

パートやアルバイトは給与で変わる

正社員として以外にもパートやアルバイトなどといった働き方の方もいるかもしれません。従業員の中に、兼業している人がいたりパートで雇用している場合も同様です。働いている方の心配もありますが、下記のような従業員がいる会社も注意しておかなければなりません。
いくつかのパターンが考えられますのでそれぞれで記載してみたいと思います。

①収入が103万円以下で扶養に入っている
高校生のアルバイトや扶養内で働きたい主婦の方などが当てはまります。この場合は、扶養している給与所得者の方で定額減税の人数に加えられていますので、本人の所得に影響はありません。

②収入が103万円を超えていて源泉徴収されている
収入が103万円を超えると税法上の扶養から外れることになるため、所得税を納めることになります。働いているところで源泉徴収されていればそこから定額減税されることになります。年末調整までの処理を行うことになります。

③収入が103万円を超えているが源泉徴収されていない
収入が103万円を超えていても源泉徴収されていないこともあります。所得税が課税される対象になりますので、翌年に確定申告をする必要があります。定額減税は確定申告の際に控除されます。

もっと様々なケースが考えられますが、すべてを上げることは難しいので該当のケースが見つからなければ申し訳ありません。

終わりに一言

給与計算をしているとどうしても切り離せないのが税金や社会保険です。そして経営者の方から聞かれることもありますので情報にはアンテナを張っています。
ご相談がございましたらお気軽にお問合せからご連絡をお待ちしております。

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