東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
補助金や助成金の要項を見ていると生産性という言葉がよく出てきます。最近は無くなっているものもありますが、生産性をどう向上させていくかという考え方は企業を継続していく上で重要な課題となっていきます。
さて、今回はを以下の3点にまとめました。
- 企業の人材確保状況
- 労働生産性と労働分配率
- 人手不足解消のために
企業の人材確保状況
お話を聞く経営者の方からは人手不足であるというお声をよく聞きます。都市部かそうでないかでも状況は違ってきますが、全国的には人手不足と感じている企業が多いようなデータが出ています。
従業員の過不足についての回答で、「過剰」から「不足」を引いた割合が従業員数過不足DIとなります。2010年代に入ると徐々に「不足」の回答が増えていて、今もその傾向は継続していることが分かります。
出典:2022年版 中小企業白書
新卒市場の動向
大学卒業を控えた2024年卒の就職活動はどのように動いているのでしょうか。就職プロセス調査によると3月の卒業時点での就職内定率は96%台と高い水準となっています。内定が出始める時期も早期化の傾向があり、大学3年生の2月時点で約2割の学生が内定をもらっていることは少し驚きです。
私が新卒で就職活動をしていた頃に比べ、時期も早くなり、就職率も大きく向上しているのが変化として見て取れます。
出典:就職プロセス調査(2024年卒)2023年3月度(卒業時点)内定状況
https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2023/05/naitei_24s-20230524.pdf
では、高卒の就職内定率はどうでしょうか。高卒の就職活動のスケジュールは大卒とは違いますので、少しデータが異なります。6月にハローワークに求人票を出し、夏休みに職場見学などを経て、秋くらいまでに面接を行います。内定が早く出る10月末時点では約7割、卒業時点では98%の学生が内定をもらっています。
出典:令和5年3月新規高等学校卒業者の就職状況https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kousotsu/kekka/k_detail/mext_00026.html
新卒で就職を希望する人はほとんど就職できていますが、新卒を採用したい企業が満足いく採用ができているとは限らないことに注意が必要です。
中途採用の動向
厚生労働省が発表している直近の有効求人倍率は1.28倍となっています。求職者にとっては仕事を探しやすい状況が続いています。
令和6年3月の有効求人倍率は1.28倍(前月比プラス0.02ポイント)
令和6年3月の新規求人倍率は2.38倍(前月比プラス0.12ポイント)
令和5年度平均の有効求人倍率は1.29倍(前年比マイナス0.02ポイント)
一方で、地方の企業や従業員規模が小さな企業に着目してみると、難しい状況が見えてきます。従業員規模が300人以上の規模では1.14倍前後のところ、従業員規模が300人未満の規模では6.19倍となっております。大規模の企業を希望する人が多い一方で、中小企業には応募が少なく人材の確保が難しいという状況を示しています。
出典:第40回 ワークス大卒求人倍率調査(2024年卒)
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2023/0426_12231.html
私が関与している企業様はほとんどが300人未満となりますので、人材の確保にはご苦労されています。
以前の記事にもありますが、助成金の活用で負担を軽減したり、障がい者の求人も検討されてもよいかもしれません。
労働生産性と労働分配率
人手不足という回答が多い原因を少し視点を変えて、労働生産性と労働分配率についてみておきたいと思います。
法人であれば年に1回は決算書を作成することになります。経営者の方であれば一通りは目を通しているでしょうし、税理士さんなどから説明を受けているかと思いますが、労働生産性や労働分配率はその中の数字には表れてこないことが多いです。どんな意味があるのでしょうか。
労働生産性
労働生産性を出すにあたり、付加価値額というものを出す必要があります。少しややこしいですが、次の2つのどちらかで算出します。
付加価値額=営業利益高+人件費+租税公課+不動産・物品賃借料(中小企業庁)
付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課(日銀方式)
付加価値額が出ましたら、労働生産性は次の式に当てはめれば出すことができます。
労働生産性(円)=付加価値額÷(役員数+従業員数)
つまり、労働生産性とは一人あたりの従業員がいくらの付加価値を上げているかを求めるということになります。企業の稼ぐ力を見ることができる数字となります。
労働生産性が高ければ、従業員が効率よく働けていると言えます。
中小企業庁の発表資料には業種ごとの平均値も出ているため、それらと比較して自社が高いか低いかを判断することもできます。
2021年度 | 2022年度 | 前年比 | |
合計 | 889.9 | 910.2 | 2.3% |
製造業 | 1,193.0 | 1,202.1 | 0.8% |
卸売業 | 1,132.3 | 1,240.2 | 9.5% |
小売業 | 513.8 | 521.8 | 1.6% |
労働分配率
次に労働分配率を見ていきます。労働分配率は次の式に当てはめれば出すことができます。
労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100
これは、先ほど計算した付加価値額に対して人件費の割合がどれくらいなのかを示しています。
人件費が高くなれば労働分配率は高くなります。逆に付加価値額が低くなっても労働分配率は高くなります。
また、労働分配率は業種により目安となる数値が変わってきます。労働集約型の業種では高い傾向があり、資本集約型の業種では低い傾向があります。
2021年度 | 2022年度 | 前年比 | |
合計 | 48.0% | 47.7% | ▲0.3 |
製造業 | 46.0% | 46.6% | 0.6 |
卸売業 | 46.6% | 43.8% | ▲2.8 |
小売業 | 49.2% | 49.1% | ▲0.1 |
人手不足解消のために
人手不足か効率が悪いか
ここでは人手不足を効率性の観点で見てみます。すべての業種に当てはまるわけではありませんが、従業員規模が大きくなるほど業務効率化に投資をしている傾向があるように感じます。
いろいろな企業を見たり、お話を聞いてきましたが、人手不足と感じている企業の中には従業員の数は適正である企業も少なくありませんでした。効率化ができていないことで結果的に人手が足りていないような状況です。
なんとなく効率化しようではうまくいかない可能性が高いです。その業界に慣れた専門家の知恵を借りたり、システムを扱う業者との連携が欠かせません。それぞれのメリットとデメリットを参考に、できることがないか考えてみることが重要になってきます。
【業務効率化のメリット】
従業員を増やさずに対応できる業務が増える→売上拡大
残業時間が短縮できる→費用削減
増えた利益や削減した費用を従業員に還元できる→満足度向上
【業務効率化のデメリット】
慣れたやり方から変更することへの反発
システム導入をすると費用が増える
適切な改善案でないと逆に効率が悪くなる
終わりに一言
補助金を使うことができるアイデアもあるかもしれませんので、気になる方は専門家に相談してみるとよいでしょう。弊所ではサービス業を得意としていますが、他の業種が得意な専門家のつながりもありますので、気になる方は問い合わせからご連絡をお待ちしております。