東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
6月の初旬に労働保険年度更新(以下、年度更新)の案内の封筒が届いているかと思います。社会保険に加入していると年に2回大きな手続きが発生しますが、こちらは労働保険に加入している事業所が対応することになる事務手続きの一つです。
さて、今回は年度更新の作業を簡単にする方法を以下の3点にまとめました。
- 年度更新とは
- 年度更新でやること
- 年度更新の作業を簡単にするためには
年度更新とは
昨年度の労働保険料を確定する手続き
年度更新の説明のためには、まず労働保険料の納付の流れを理解する必要があります。
ここで言う労働保険とは、労災保険と雇用保険の二つの保険をまとめたものを指しています。
事業を行っていると、税金や社会保険料といった国に納めるお金を毎月納付することになります。従業員が納めるはずのお金も、給与から天引きして事業主がまとめて納めるという仕組みとなっています。
社会保険料として実際に納める額は労働者と折半なのですが、まとめて納めることで金額が大きくなり驚かれる方も多くいらっしゃいます。
しかし、労働保険料の納付は他の社会保険と違い、一年分をまとめて支払う仕組みとなっています。この申告作業が労働保険年度更新と呼ばれる作業です。
では、もう少し具体的に流れを見ていきます。
労働保険料は、先に見込み額を計算し納めるという仕組みをとっています。
事業開始か労働保険を適用するタイミングで、「概算の」労働保険料を申告し納付します。従業員を雇う事業主には労災保険に加入する義務がありますので、事業開始と一緒に従業員を雇う場合は労働保険の適用もあわせて行うことが一般的です。
納める保険料は概算となりますので、初年度にどれくらいの従業員を雇い、全部でいくらくらいのお給料を支払うかという見込みを出しておいて、料率を掛けたものを前払いで納めておきます。なお、料率は労災事故や退職の発生のしやすさやにより変わっています。
年度が終わるといくらを支払ったかが確定しますので、事前に納めておいた分との差額を清算します。この清算する作業が年度更新と呼ばれる作業になります。
年度更新でやること
昨年度の給与の総額を計算する
労働保険料は、4月1日から翌年3月31日までの1年間に企業が従業員に支払った賃金総額に対し、事業ごとに決められた保険料率を掛けることで算出できます。
労災保険 | 雇用保険 |
2.5~88/1000 | 15.5~18.5/1000 |
すべての従業員 | 一定時間以上働く従業員 |
事業によっては、すべて正社員ばかりのところもあるでしょうし、逆に扶養内で働く方ばかりのところもあるでしょう。
勤務時間が短く雇用保険に加入していない従業員の賃金は、労災保険の計算には入れますが、雇用保険の計算には入れません。対象者がまったく同じですとシンプルなのですが、そんな事業所ばかりではありませんので計算が難しくなります。
厚生労働省のサイトに計算が簡単にできるExcelがありますので、そちらを使うこともご検討ください。
集計するときには、賃金に含めるものと含めないものをしっかりと分けておかなくてはいけません。
基本的には支払ったものはすべて含まれますが、一部含まれないものがあるのでその分は抜いて合計額を出す必要があります。
昨年度に支払った給与総額が出せましたら、料率を掛けて昨年度分として「確定した」労働保険料を出します。
事業開始時や昨年の年度更新のときに申告した「概算の」労働保険料と「確定した」労働保険料の差額を還付してもらうか翌年度に充当するかを選びます。
ここで話がややこしくなるのが、年度更新では今年度の概算の労働保険料の申告も同時に行う点です。
昨年度分の過不足の金額と、今年度分の概算分の金額をまとめて計算しなければなりません。
今年度分の概算保険料は、従業員の数が大きく変わらなければ昨年度の確定保険料と同額でよいとされていますので、難しく考える必要はありません。
用紙を見るとしっかりと書かれているのですが、細かい字で書かれているため慣れるまでは少し難しく感じてしまうかもしれないです。
まとめると以下のようになります。
・今年度の概算の労働保険料を先に納付する
・年度が終わったら、確定した賃金総額に対して労働保険料を計算する
・概算で納めていた労働保険料(10,000円)-確定した労働保険料(9,000)+概算で納める労働保険料(9,000)=10,000円を今回の期間内に納めることになります。
年度更新の作業を簡単にするためには
日々の管理が重要
事業をしている人の中には、年度末に確定申告で大変な思いをする方も多くいると思います。毎月細かく処理しているとそこまで大変ではないのですが、1年分をまとめてやると、とても大変な思いをすることになります。
年度更新も昨年度分の情報をまとめて処理しますので、毎月しっかりと管理しておくことが重要となります。
管理と一言で申し上げましたが、勤怠の管理から給与の管理などの多くの情報を見ておく必要があります。
社労士や税理士に給与計算を委託している場合はよいですが、自社ですべてを行っている場合にはミスに気付くのに時間がかかってしまいます。
年度更新のタイミングとなって、昨年度分をよく見ていたら社会保険料の変更に気づくなんてこともあります。
日常の管理としても、なるべくデジタルで管理ができた方がミスも少ないですし、処理も早くできます。
打刻式のタイムカードを使用している事業者の方は、スマホを使い打刻できる仕組みの導入を検討してみてもよいかもしれません。
終わりに一言
今回は年度更新が簡略化できるというお話でしたが、離職票や育児休業給付金の時にもあると便利ですので、しっかりと管理しておきましょう。弊所でも年度更新の手続きを行っていますし、お時間がある方は事業所を管轄する労基署でも対応できるはずですので、難しいと感じる方は足を運んでみてもよいかと思います。