初めて人を雇う時と関係法令

営業支援

東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
事業を開始してから軌道に乗ると一人では手が回らなくなり、従業員を雇うことを考えるようになります。飲食店などのサービス業の場合は最初から従業員がいないと回らないということもあるでしょう。

さて、今回は人を雇う時に気をつけておくべきことを以下の3点にまとめました。

  • どこで求人するか
  • 労働条件の通知は適切に
  • 雇用保険・社会保険の加入

どこで求人するか

有料職業紹介所

求人をする際によく使われるのが、有料の職業紹介所です。
紹介所と書きましたが、実際にはインターネット上に求人情報を公開して応募者を募るやり方です。
こちらは職業安定法に定められています。

私が以前在籍していたリクルートでは多くの求人サイトを運営しておりました。
有名なところではこのようなサービスがありました。
・タウンワーク
・リクナビ
・indeed
・とらばーゆ

他にも多くの会社が参入しており、求人サービスが乱立しています。
・doda
・マイナビ
・エンジャパン
・バイトル
・タイミー
以前、とあるセミナーで、日本は求人サービスが乱立しているという話を聞きました。諸外国ではある程度の規模の求人サービスに掲載すれば、多くの求職者に情報を伝えることができるようです。日本では細分化が進んでしまっているため、どのような従業員を募集したいのかに合わせて求人サービスを選ぶ必要があります。

それぞれのサービスの詳細は割愛しますが、求職者の属性が異なることが多いため、自社が募集したい求職者にあった求人サービスを選ぶことが重要になります。

無料職業紹介所

無料の職業紹介所で一般的なところはハローワークです。
こちらも職業安定法に定められています。
他にもありますが、ここではハローワークに絞ってみます。

ハローワークには、開業する前にお世話になったことがある方も多いと思います。雇用保険にある失業給付や職業訓練などがその一つです。

求職者が仕事を探しにくる場所ですので、企業が求人情報を掲載することもできます。掲載料は無料です。
無料というメリットがとても大きいですし、求職に来ている人に対して職員さんがお勧めしてくれることもあります。
職員さんは、求職者との会話を踏まえて紹介先に選んでくれることもあります。民間のサービスとは異なり、マッチングの精度は高いとは言えませんので注意が必要です。
また、ハローワークの求人情報は文字ばかりというのがネックでもあります。どうしても伝えたいことが伝わりにくくなってしまうため、応募数という点では有料職業紹介所に劣ってしまいます。

求人にかけても良い予算と、どのような人を募集したいのかをあらかじめ明確にした上で、求人サービスを選定していくことが求められます。

労働条件の通知は適切に

労働条件通知書

労働条件の明示義務は労働基準法で定められています。
労働者が求人サービスを使って応募してきた場合、その求人サービスに雇用に関する条件を掲載しているはずです。掲載している条件で応募してきているはずですが、必ずしもその条件で採用しなければならないものではりません。

具体的には、実務1年以上の経験者、月給30万円で募集したとします。
実務は半年しか経験していませんが、保有している資格や他社での経験に魅力を感じた場合には採用に至ることもあるでしょう。
その場合も月給30万でないと採用してはいけないかと言うとそうではありません。実務が不足していることなどの理由を明確にした上で条件面をすり合わせることも可能です。

ここで注意が必要となるのが、全てを口頭で終わらせないということです。
労働条件通知書の明示事項には義務となっている項目もありますし、なにか問題が起きた時に書面で残していないと解決に時間がかかり双方の負担が増加してしまいます。

就業規則

就業規則についても労働基準法に定められています。就業規則は、その会社で働く上でのルールブックのようなものです。
10人以上を雇用する事業所では作成と届出が義務となっています。それ以下でも作成することは可能です。
ここでは作成の義務がないとしても作成しておくことをお勧めします。
決まった形式ははありませんので、最初は定型文を参考に、必要な項目を追記したり不要な項目を削除したものもで十分です。

中小企業にありがちなのが、社長がルールブックという会社です。
理論立てて頭の中で整理されている社長であれば良いのですが、中には気分でルールが変わったり、聞く時によってルールが変わる社長もいらっしゃいます。
その時によって変わってしまうと、従業員も混乱しますし、モチベーションへの影響も心配です。

作成をお勧めするもう一つの理由は、助成金の申請に関わってくることがあるからです。
特定の項目を就業規則に定めることを申請の要件とされていることもあります。

少し脱線するかもしれませんが、個人の確定申告や法人の決算も時間をかければ自分でできるかもしれません。
ただ、間違った内容で申告していたり、申告できるものが漏れていないよう税理士にアドバイスを求めている経営者が多いと思います。それの労務版だと考えるとわかりやすいかもしれません。

就業規則に関しての資料を読んだりやセミナーに参加していますが、いつも奥が深い内容だなと勉強になることばかりです。
就業規則の未整備が原因で、未払い残業代の請求や解雇の取り消しで訴えられた結果、会社が多額の支払いをしている事案も多く発生していると聞きます。
作るだけであれば誰でもできるかもしれませんが、いざという時に備えるためにも労働法に強い弁護士や社労士の目を通しておくことをお勧めします。

雇用保険・社会保険の加入

強制で適用される事業所

雇用保険と社会保険には強制で加入しなければならない事業所とそうでない事業所があります。
その線引きも若干異なるため、ややこしくなりがちです。
労災保険は、従業員がいるのであれば強制で加入しなければなりません。

まず、雇用保険はその名前の通り雇用保険法に定められています。
従業員が一人でもいる事業所は原則対象となります。
一部の例外として、個人経営で5人未満の農林・畜産・養蚕・水産に当てはまる場合は任意とされています。
適用となったら10日以内に届出が必要になりますが、届出をしていないから適用されないと言うこともありません。届出をしないと罰則の可能性もありますし、保険料の支払いはやってきます。

そして、社会保険は健康保険と厚生年金に分かれており、それぞれ健康保険法と厚生年金保険法で定められています。
こちらは法人か個人経営で従業員が5人以上の場合は対象となります。
個人経営の場合は業種によって適用されない業種もあります。
適用となったら5日以内に届出が必要となります。届出をしないと保険証が発行されませんので、従業員が病院に行っても全額負担となってしまいます。雇用保険と同じく罰則の可能性もあります。

任意で適用できる事業所

強制で適用されなくても、任意で加入できることもあります。
任意適用事業所と呼ばれます。

雇用保険の場合は、上記で挙げた例外に当てはまると任意となります。
社会保険の場合は、一定割合の従業員の同意を得ることで適用してもらうことができます。任意であっても社保完備とすることで、求職者へのアピールポイントにはなりますが、保険料は半額負担になりますし取り消しの申請には従業員の多くの同意を必要とします。

厚生年金に加入しておいた方が将来の年金も増えますし、健康保険の傷病手当金や任意継続など有利になる制度も多くあります。
これらを知る人が増えてくると、社保完備を選びたいと言うイメージになるのかもしれません。

終わりに一言

初めての開業であれば、ただでさえやること多いのに、人を雇うと追加の手続きもたくさん出てきます。開業の先輩の話や専門家の話を聞いておくと将来のいろいろな場面で役に立ちます。

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