東海地方の田舎町で【コンサルタント事務所】を運営している元りく社労士です。
先日、ハローワークの職員さんが講師を務められた助成金の講習を受けてきました。まだまだ活用が少ない助成金の一つとして障がい者雇用に関する者をご紹介されていました。
一見するだけでは分からない障がいをお持ちの方が身近にいたため何かの参考になればと思い記事にします。
さて、今回は人手不足解消につながるかもしれない障がい者雇用と受給できる助成金を以下の3点にまとめました。
- 障がい者と雇用について
- 受給できるかもしれない助成金
- 受給イメージ
障がい者と雇用について
国としては障害者の雇用改善を進めている
まず、令和6年4月1日に厚労省が発行している「障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~」から、障害者雇用の状況について引用します。
⚫民間企業に雇用されている障害者の数は64.2万人となり、20年連続で過去最高を更新し
https://www.mhlw.go.jp/content/000767582.pdf
ています。(令和5年6月1日現在)
⚫実雇用率(常用雇用労働者に占める、障害者である労働者の数)は2.33%、障害者雇用
率達成企業割合は50.1%で、障害者雇用は着実に進展しています。
なお、一定以上の従業員を雇用している企業では、障害者の雇用が義務付ける目的で法定雇用率という割合が定められています。
例)常時雇用している労働者が150人の企業の場合
150人×2.5%=3.75人⇒3人以上となる
※人数のカウントには決まりがあるため、単純に3人を雇えばよいとはならないため注意が必要です。
逆から考えると、40人以上の企業では1人以上の障害者を雇用しなければならないとされています。この数字は毎年少しずつ改正されていて、人数の少ない企業も対象になってきています。
そして、障害者の雇用に関する事業主の社会的責任を果たしてもらうため、障害者雇用納付金制度という制度が運用されています。障害者の雇用人数が法定雇用率以上の企業には「調整金」が支給され、法定雇用率未満の企業からは「納付金」を徴収しています。
納付金の一部は調整金に充てられますが、残りは報奨金や助成金として支給されています。
障害者を初めて雇用する場合、不安なことも多いかと思います。そんな時は、お近くのハローワークなどで相談に乗ってもらったり、セミナーや見学会で理解を深めることもできます。
受給できるかもしれない助成金
障害者を雇い入れた事業主に対して、経済的負担の軽減のための助成金がいくつかあります。
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)
就職が困難な障害者を、ハローワークなどの紹介により、一定期間試行雇用する事業主に対して助成されます。
一つ目は、障害者を試行的に雇用する事業主向けの助成金となります。
いきなり正社員で働けるのか不安がある事業主の方は、まずはこちらで3か月~12か月の期間を決めて雇い入れてみてはいかがでしょうか。1人当たり最大4万円×3か月が助成金として支給されますので、経済的負担を軽減することができます。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
障害者などの就職困難者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して助成されます。
二つ目は、障害者を継続して雇い入れようとする事業主向けの助成金になります。
先ほどのトライアル雇用助成金よりは対象が細かく区別されていますが、少なくとも30万円以上となっており最大で240万円が助成されるものとなっています。継続して雇用していくことになりますので、障害の特性や自社の業務ができるかなどを見ておく必要があります。
雇い入れてからの支援機関も、労働局はじめいくつもありますので共に働きやすい環境を作っていければと考えています。これは障害者の方に限らずですが、慣れた頃に退職となってしまわないよう共に働く同僚や上司の理解や配慮ができる職場つくりをお手伝いしていきます。
キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
障害者の雇用促進と職場定着を図るために、次の①または②のいずれかの措置を講じた場合
に助成されます。
①有期雇用労働者を正規雇用労働者、多様な正社員または無期雇用労働者に転換すること
②無期雇用労働者を正規雇用労働者または多様な正社員に転換すること
三つ目は、障害者の雇用を継続するために受けることができる助成金になります。
先ほどの「特定求職者雇用開発助成金」で出てきた継続して雇用という点では似ていますが、こちらは正規雇用労働者(正社員)に切り替えた場合に受給できる助成金となります。こちらも障害の種類や程度に応じて助成額は異なりますが、最大で120万円が支給される助成金となっています。
キャリアアップ助成金は、有期雇用から無期雇用への転換で受給できるとあって比較的メジャーな助成金ですのでご存じの方も多いと思います。その障害者正社員化コースということで若干金額が高めに設定されています。
受給イメージ
身近な具体例を一つ
私が知っている個人経営の飲食店に障害をお持ちの50代の方が働いています。ただ、採用面接の時点では障害があることは分からなかったそうです。入社後の仕事振りを見ていてもそんな素振りはありませんでしたが、ある時何気ない会話の流れで本人から教えてもらえたということでした。
このケースでは、ハローワークからの紹介であったとしても、ハローワークも障害者であると認識していなかったので助成金の対象とはなりません。
では、このケースでハローワークから障害者として紹介されていたらどうでしょうか。
①面接で通常と同様の判断をして採用の可否を決めます
②働きぶりを見ていくために3か月間のトライアル期間を決めて採用します
└トライアル雇用助成金⇒4万円×3か月=12万円
③3か月の働きぶりを見て雇用継続を判断した結果、無期雇用労働者として働いてもらいます
└特定求職者雇用開発助成金⇒40万円×6期=240万円
④さらに半年間の働きぶりを見て労働者としての適性を判断した結果、正規雇用に切り替えます
└キャリアアップ助成金⇒30万円×2期=60万円
助成金の総額は312万円(3年間)となります。
併用の兼ね合いで受給できない期間が生まれることがありますので、必ずしもこの例と同じになるとは限りませんが、一例ではこのようになります。大企業は少し受給額が減ります。
また、このような流れをうまく取り入れることができれば、最低でも12万円+80万円+45万円=137万円となります。
見た目では分からない方は公表されないので受給対象にならないということも考えられますが、人手不足の現代では採用の枠を広げる一つの選択肢として検討の余地はあるかもしれません。
終わりに一言
知人のお店ではとてもよく働いてくださる従業員さんだと聞き及んでいます。
求人するためにハローワークは有効な手段となりますし、助成金の相談にも使えますのでぜひ有効活用していきましょう。助成金の活用には就業規則の整備や計画書の提出など手間のかかる作業も多くあります。そんな時は専門家である社労士にご相談ください。