最低賃金の引き上げと企業の対応

労働法・労働保険

東海地方の田舎町、岐阜県美濃加茂市で【社会保険労務士・中小企業診断士】として企業の支援をしている元りく社労士です。
ここ数年は毎年の恒例となりましたが、今年も最低賃金の引上げに関するニュースが出てきました。
中小企業の中には、引上げに合わせてやらなければならないことが多くあると思います。

さて、今回は、最低賃金の引き上げと企業がやるべき対応について以下の3点にまとめました。

  • 令和8年度の目安
  • 事業所がやること
  • 将来的な懸念点

令和8年度の目安

全国平均で+55円

令和8年7月28日に発表された情報では、各都道府県の地域別最低賃金の引き上げ額はAランクで54円、BランクとCランクで56円の引上げとなっています。
参考までに、昨年は63円が目安となっていました。最終的な引き上げ額も、この地域は目安通りとなっていましたが、地域によってはもう少し上がるところがあるかもしれません。

ランク都道府県金額
A埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪54円
B北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、志賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡56円
C青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄56円
令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74920.html

目安通りに最低賃金額の引き上げが行なわれるとすると、全国の加重平均は1,176円となります。
引上げ率でみると4.9%の引上げとなり、大きく上がった昨年の6.3%よりは少し落ち着いた印象を受けます。

事業所のやること

社内制度の再設計

事業所としては、改正後の最低賃金に引っかかってくる従業員がいれば見直しが必要となります。
それに伴って、賃金テーブルの見直しや時給計算ではない従業員の昇給などが必要になることもあります。

過去の記事でも触れましたが、ここ数年で最低賃金は1.4倍に増加しています。
時間単価では、岐阜県の最低賃金が平成27年(2015年)の754円から、令和7年(2025年)には1065円と311円の増加となります。
正社員などの月給の昇給の仕組みが整っていないと、逆転現象が起きてくることが懸念されます。
賃金テーブルの見直しや全体的な昇給の仕組みが整っているかを見ておく必要があります。

補助金や助成金の活用

最低賃金の改正は、出ていくお金が増えるだけではありません。
国としては、しっかりと対応する事業所を支援する施策も打ち出しています。
いくつかあるものを見ておきたいと思います。

施策名概要金額
業務改善助成金業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備導入やコンサルティングなど)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成。
※令和8年度の申請は9月1日から
最大600万円
※引上げ額と対象人数により変動
キャリアアップ助成金
(賃金規程等改定コース)
非正規雇用の労働者の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を適用させた場合に助成
※計画書の受付は随時
一人当たり最大7万円
※中小企業の場合
※金額は引上げ率により変動
小規模事業者持続化補助金小規模事業者等が取り組む販路開拓や商品の改良・開発、業務効率化の取組にかかる経費の一部を補助
※第20回は2026年11月5日~12月15日
補助額に150万円上乗せ
※赤字の場合は補助率も引上げ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金技術的革新性のある製品・サービスの開発や、新市場・高付加価値事業への進出などを補助
※第1回は2026年6月29日~10月30日
最大3500万円~9000万円
※事業枠や従業員数により異なる
中小企業省力化投資補助金
(一般型)
売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した設備を導入するための事業費等の経費の一部を補助。
賃上げを満たすと、補助率が1/2から2/3に引き上げられる。
※第8回は8月中旬の予定
最大1億円
※従業員数により変動

タイミングや補助率や上限額は制度により様々です。事業所にあった制度が活用できるとよいです。

将来的な懸念点

人件費増加

最も大きいのは、人件費が一気に膨らむことです。
同じように働いてもらうのであれば、より付加価値を高められるような仕組みにしたいところです。

人手不足の加速

最低賃金でも負担が大きくなるのに、他と差をつけることもできず、人が集まらないことも考えられます。

年収の壁とも関わってきますが、忙しい時期に収入面を意識して働き控えも起きると考えられます。
法改正や通達により社会保険に関しては大丈夫かなという見方もできますが、税制面への影響もありそうです。
年収の壁については、過去の記事でも触れていますので、ご興味ある方はご一読ください。

終わりに一言

毎年上げり続けている最低賃金ですが、2030年ころには1500円としたいという目標をかかげていますので、このペースのまま続くのでしょう。
この状況を嘆くのではなく、どうすれば生産性が高められるのか、どうすれば業務は効率化できるのかを考えていくことが求められています。
事業計画、業務効率化、補助金、助成金は弊所の得意とする分野です。気になる方がいましたら、お気軽にお問い合わせください。

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